河原の石ころ(岩石)を分類するとき、そのでき方によって大きく3つに分けることができます。今回は、堆積岩、火成岩、変成岩の順で、でき方や特徴を説明します。
また、記事の後半では、実際に長良川で見られる石を紹介しています。
堆積岩
地表にあるものが川の流水や風などによって運ばれて、川底や湖底、海底にたまって、固結した岩石を堆積岩と呼びます。
堆積するものは、地表に分布していた岩石がくだかれてできた砕屑物(礫、砂、泥など)、生物の遺骸、蒸発の結果として残る化学沈殿物、火山噴出物(火山灰、軽石など)等があります。
砕屑物
地表に露出している岩石は、風化し、水などによって削られます。また、割れ目に入った植物の根や氷の体積膨張によっても砕かれます。この削られたり、砕かれたりしてできたものを砕屑物(さいせつぶつ)と呼びます。
砕屑物は、流水や風で運ばれるうちに様々な大きさになりますが、その大きさや重さの違いで名称が分けられます。粒の大きさを2mmと1/16mmで区切って、礫、砂、泥に分けています。
2mm以上が礫、2mm~1/16mmが砂、1/16mm未満が泥です。それらを主とする岩石がそれぞれ礫岩、砂岩、泥岩となります。
生物の遺骸からできた石
生物の遺骸からつくられる岩石には、石灰岩、チャート、石炭などがあります。
石灰岩は、炭酸カルシウム(CaCO3)の骨格や殻をもつサンゴ、石灰藻、貝類、有孔虫などの生物の遺骸がたまってつくられるもので、ほとんどが浅い海でできたものです。チャートは、二酸化ケイ素(SiO2)の殻をもつ原生動物の放散虫や珪質海綿が、深海底で堆積したものです。
石炭は、古くから燃料として使われてきましたが、実は多くの植物が埋もれてできたものです。
ほかに、珪藻がたまってできた珪藻土や鉄バクテリアの作用でつくられた鉄鉱層などもあります。
火山噴出物でできた石
火山灰や火砕流なども地表にたまって地層をつくります。
このような岩石を火山砕屑岩と呼びます。マグマの性質や噴火の性格などを調べるときは火山岩(火成岩)として扱いますが、地表での堆積作用を考えるときには堆積岩として扱います。
このように、岩石には二重の性質をもつものもあります。
火成岩
マグマが冷え固まってできた岩石を火成岩と呼びます。
さらに火成岩は、大きくマグマが地上で固まる火山岩と、地下で固まる深成岩に分けることができます。
ただし、火成岩はマグマがそのまま固まったものではありません。実は、マグマが冷え固まる前に、水分などの揮発しやすい成分は抜け出してしまうのです。火成岩では、マグマの組成が鉱物の種類や量比(岩石の組成)に、マグマが固まった環境が鉱物の粒の大きさや並び方(岩石の組織)として記録されています。そこで、これらの特徴を目安にして、火成岩を分類しています。
それが、下の図に示した火成岩の代表的な分類表です。表の横方向は“岩石の組成”を表す軸、縦方向は“岩石の組織”を表す軸です。さらに横軸を3つに分けて、それぞれの枠に入る岩石に含まれる鉱物の種類が上に表現されています。岩石中に含まれている鉱物の種類を目で判断することで横軸の枠が決まります。
ガスになりやすい成分(水など)を多く含むマグマが地上に出てくると、マグマにかかっていた圧力が急激に低くなるため、ガスになりやすい成分が一気にガスになって容積が急激に増え、爆発的な噴火となることがあります。
その噴出様式(溶岩であるか、火砕流であるか)によっては、同じ成分をもつマグマであっても(同じ種類の鉱物をふくむ岩石であっても)、見かけの異なる岩石となります。流紋岩質溶岩(一般に流紋岩と呼ばれる)と流紋岩質溶結凝灰岩(濃飛流紋岩の主体をなす岩石)がその例です。
変成岩
どのような岩石でも、新たに高い圧力や高い温度のもとに置かれると、その状態で”安定である”鉱物が岩石中に新しくできます。そのため、もととは違った別の岩石になります。しかしながら、圧力や温度が非常に高くて溶けるとマグマがつくられてしまいます。それが冷え固まってできた岩石が先ほど紹介した火成岩です。
一方、もともとの鉱物が溶けることなく別の鉱物に変わった岩石は変成岩と呼ばれます。この変成岩中で新たにできる鉱物の種類は、もともとの岩石の化学組成によって変わります。また、温度や圧力の違いによっても、できる鉱物の種類が変わります。
そのため、変成岩は、本来できた鉱物の組み合わせと岩石の化学組成、変成の度合によって分類されますが、大まかには温度と圧力を基準に、以下のとおりと考えて問題ありません。
- 温度と圧力のどちらも強くはたらいて変化してできた岩石=広域変成岩
- 主に温度が強く働いて変化してできた岩石=接触変成岩
- 主に圧力が強く働いて変化してできた岩石=圧砕岩(マイロナイト)
広域変成岩
広域変成岩は、数100kmにもわたる帯状の広い範囲に分布することが多いため、このような名称がついています。
縞模様がみられ、流動したように変形している結晶片岩と呼ばれる岩石や、鉱物の粒が粗くなり、見かけは花こう岩に似ていますが、縞状の構造をもつ片麻岩と呼ばれる岩石がこの仲間です。
接触変成岩
接触変成岩は、花崗岩体の周りに限って分布し、花崗岩をつくるマグマの熱によってできたものです。
ホルンフェルスと呼ばれる岩石は、もともとは堆積岩である泥岩が熱の影響で変わったものを指しますが、接触変成岩全体を指すようにも使われることがあります。美濃地方の河原に見られる変成岩はこの接触変成岩です。
変成岩は、それができる以前に堆積岩、火成岩、変成岩のいずれかであったはずですから、もとの岩石の性質を残していることが多く、二重あるいはそれ以上の現象を記録していることもあります。
長良川で見られる石ころ
さて、ここからは、長良川の大安大橋上流右岸で見られる美濃帯堆積岩類(チャート、礫岩、砂岩、泥岩、石灰岩、緑色岩(玄武岩質溶岩など))、花崗岩類(花崗岩、花崗閃緑岩、花崗斑岩)、安山岩、熱変成作用でできたホルンフェルスを順に紹介します。
チャート
白色・灰色・黒色とそれらが混ざり合ったもの、あずき色、うすい緑色など、さまざまな色があります。ハンマーなどで割るとゼリーのような半透明感がありますが、硬くてハンマーや釘では傷がつきません。
よくみると表面に小さな傷・へこみがあります。割れたところは、ガラスの割れ口のように鋭いです。他の石と比べて、ややかどのある多角形をしているものが多いです。
礫岩
礫(小石、径が2mm以上)が集まってできており、礫と礫の間を砂粒などが埋めています。色は礫や砂などの色によりますが,全体に暗い灰色が多いです。礫の入ったコンクリートと見まちがうので注意が必要です。
礫の大きさや入り方によっては、ゴツゴツしたいびつな形のものもあります。礫の粒が小さいものでは、丸みのある石となります。
砂岩
灰色から暗い灰色のものが多く、風化してオレンジ色がかるものもあります。
よくみると砂の粒がわかり、ざらざらしている場合があります。黒色の小破片(泥岩)が入ることや、砂の粒が並んで、縞模様になっていることもあります。
ただし、熱変成作用などを受けると、砂の粒がわかりにくくなり、ざらざら感もなくなります。かどのとれた箱型から丸い形が多いです。
泥岩
泥が集まってできた岩石のため、灰色から黒色、つやのない黒色がほとんどで、粒が小さく、よく見ても石をつくる粒は見えません。灰色の細かな縞模様が見られることがあります。
細長い楕円形や扁平なものが多く、また表面に割れ口がいくつもみられる場合が多いです。
石灰岩
白色から灰色で、表面がなめらかなものが多いです。表面の傷が白く粉っぽく見えます。他の岩石と比べてやわらかく、ハンマーやくぎで簡単に傷がつきます。
風化した表面をよく見ると、フズリナなどの化石が浮き上がって見えることがあります。一般的には、削られやすいため扁平で丸いです。ただし、ここでは分布地が割合近いということもあり、やや角ばっているものもあります。
緑色岩(玄武岩質溶岩など)
緑色、暗い緑色、黄緑色で、あずき色がかることがあります。よく見ても結晶の粒は見えないことが多いですが、結晶の粒が大きい場合、光に反射させると細かくキラキラ光るものもあります。
表面に幅のせまい割れ目や、へこみのあることがあります。いびつな形がふつうで、かどがとれて丸みがあります。
海底などで噴出した玄武岩類で、圧力や熱、熱水などにより変質作用を受けていて、変質作用でできた鉱物の多くは緑色です。そのため、全体に緑っぽい色の石となります。
花崗岩
表面はなめらかに見えますが、触ってみると少しざらざらします。黒い粒と白い粒が、同じような大きさで入っています(等粒状組織といいます)。入っている鉱物は石英、長石、黒雲母などです。
黒い粒(黒雲母)のところが浅くくぼんでいるものがあります。丸っこい形のものが多いです。
花崗閃緑岩
花崗岩と比べると、黒っぽい鉱物(有色鉱物)が多く、全体的にやや黒っぽく見えます。花崗岩と同様に地下でゆっくり冷え固まった岩石であるため、白っぽい粒や黒っぽい粒が同じような大きさで入っています(等粒状組織)。丸っこい形のものが多いです。
ここで花崗閃緑岩と判断している岩石の中で、鉱物組成(鉱物の量比)を偏光顕微鏡などで調べると、閃緑岩や花崗岩と判断した方がよい岩石があるかもしれません。
花崗斑岩
無色透明~灰白色の石英、白色の長石、緑黒色の黒雲母などが岩石の中に斑点状に入り(斑状組織といいます)、くっきり見えます。
花こう岩に似ていますが、大型の長石類が斑点状に入る点で異なります。かどのとれた箱型から楕円形のものが多いです。ここでは数は少ないです。
安山岩
暗い灰色のものが多いですが、白っぽいものもあります。白色と緑黒色をしたやや大きい斑点状の結晶(斑晶)がわかるものが多いです。白色の鉱物が長石であり、緑黒色の鉱物が角閃石や輝石です。
斑晶があまりはっきりとしないものもみられ、砂岩と見まちがえる場合があります。ここでは、かどのとれた箱型から楕円形のものが多いです。
ホルンフェルス
泥岩や砂岩などが高い熱によって変成してできた岩石です。表面はもとの岩石の色を基本にしてさまざまな色を示しますが、紫色っぽく(わずかに赤味を帯びて)見えることが多いです。これは、熱変成作用によって、黒雲母などの細かい鉱物が生成されているためです。とても硬く、割れ口は角ばっていることが多いです。
岩石の表面に灰色をした数mm径の結晶が見えるものがありますが、熱変成作用で新たな鉱物が結晶化したものです。ハンマーでたたいたり、岩石同士をぶつけたりすると、金属音を出すことがあります。
丸っこいですが、多角形のものが多いです。
注記
※ここでは、岩石を肉眼で判断していますが、本来は岩石を薄くけずって、光が通過するようにして顕微鏡(偏光顕微鏡)などで観察し判断するのです。
そのため、間違って岩石名が書かれてある場合があるかもしれませんが、その場合はお許しください。