肉眼で見分ける第一歩
一般的に岩石を肉眼で見分ける第一歩は、堆積岩、火成岩、変成岩の3グループのいずれに属する岩石であるかを決めることです。
ただし、岩石を観察する際、次のことを頭に入れておくことが重要です。
1.色や形に頼りすぎない
物を見分ける場合、見た目の色や形などによって分けようとしますが、岩石の場合、その色や形はあまり参考にはなりません。
2.石ができる過程に注目する
どのグループ(堆積岩、火成岩、変成岩)かによって、それぞれ形成される過程が異なり、それぞれの形成過程で起こったことが岩石の中に残されています。
そのため、それに注目して区別していきます。
例えば、火成岩はマグマ(液体)が冷えて鉱物をつくりながらできたものですから、冷え方の程度に応じて、岩石の中に鉱物の粒がところどころに存在する状態(斑状)から、岩石全体に同じような大きさの鉱物が集まっている状態(等粒状)まで変化します。極端な場合には、全く鉱物ができないうちに冷えて固まってしまったもの(ガラス質、代表は黒曜石)もあります。
3.なかなか理屈どおりにはいきません。
岩石を分類するとき、実際には、火成岩の安山岩質溶岩と堆積岩の砂岩を区別することが肉眼ではできないような場合もあります。
基本的な岩石の形成過程を理解した上で、できるだけ数多くの岩石にあたり、慣れる必要があります。
このようにして、河原の石を見て、岩石に興味をもってもらえると嬉しく思います。
土岐川沿いの河原の石
岐阜県美濃地方の河原で見られる岩石の種類は限られますので、上流域の地質(岩石の分布)を把握し、かつ河原にある代表的な岩石に慣れれば、次第にわかるようになるでしょう。
今回は、木曽三川以外の河原の石として、土岐川沿いの河原の石について紹介します。
土岐川流域にはおもに花崗岩類、美濃帯堆積岩類、新第三紀堆積岩(瑞浪層群)、濃飛流紋岩(溶結凝灰岩など)と花崗閃緑斑岩等が分布しますから、これらに由来する岩石が下流に運ばれています。
美濃帯堆積岩類の中には、花崗岩類による熱変成作用でできたホルンフェルスも含まれています。
これらのほかに、土岐川流域には安山岩岩脈や領家帯構成岩類の一つである結晶片岩が小規模に分布しています。
多治見橋付近で見られる美濃帯堆積岩類(チャート、砂岩、泥岩、緑色岩)、新第三紀層の砂岩、花崗岩類・濃飛流紋岩類(花崗岩、花崗閃緑岩、花崗斑岩、溶結凝灰岩)、熱変成作用でできたホルンフェルスを順に紹介します。
石の説明は、木曽三川沿いの河原の石ころとほとんど同じですが、載せておきます。
チャート
赤褐色、褐色、うすい緑色、白色・灰色・黒色とそれらが混ざり合ったもの、褐色など、さまざまな色があります。
ハンマーなどで割るとゼリーのような半透明感がありますが、硬くてハンマーや釘で傷がつかないです。よくみると表面に小さな傷・へこみがあります。
割れたところは、ガラスの割れ口のように鋭いです。
他の石と比べて、かどのある多角形をしているものが多いです。
砂岩
灰色から暗い灰色のものが多く、風化して全体に淡黄色がかるものもあります。
よくみると砂の粒がわかり、ざらざらしている場合があります。黒色の小破片(泥岩)が入ることがあります。
ただし、熱変成作用などを受けると、砂の粒がわかりにくくなり、ざらざら感もなくなります。
砂の粒が並んで、縞模様になることもあります。かどのとれた箱型から丸い形が多いです。
砂粒がわかりざらざら感があり、硬くないので、実際に見るとわかりやすいと思います。
泥岩
泥が集まってできた岩石のため、灰色から黒色、つやのない黒色がほとんどで、
粒が小さく、よく見ても石をつくる粒は見えません。
細長い楕円形や扁平なものが多いです。表面に割れ口がいくつもみられる場合が多いです。
熱変成をやや受けていると思われるものがあり、やや硬くなっていると思われます。
緑色岩(玄武岩質溶岩など)
緑色、暗い緑色、黄緑色で、あずき色がかることがあります。
よく見ても結晶の粒は見えないことが多いですが、結晶の粒が大きい場合、光に反射させると細かくキラキラ光るものもあります。
表面に幅のせまい割れ目やへこみのあることがあります。いびつな形がふつうです。
かどがとれて丸みがあります。
海底などで噴出した玄武岩類で、圧力や熱、熱水などにより変質作用を受けていて、変質作用でできた鉱物の多くは緑色です。そのため、全体に緑っぽい色の石となります。
花崗岩
表面はなめらかに見えますが、触ってみると少しざらざらします。
黒い粒と白い粒、うすピンク色の粒が、同じような大きさで入っています(等粒状組織といいます)。
入っている鉱物は石英、長石、黒雲母などです。黒い粒(黒雲母)のところが浅くくぼんでいるものがあります。丸っこい形のものが多いです。
花崗閃緑岩
花崗岩と比べると、黒っぽい鉱物(有色鉱物)が多く、全体的にやや黒っぽく見えます。
花崗岩と同様に地下でゆっくり冷え固まった岩石であるため、白っぽい粒や黒っぽい粒が同じような大きさで入っています(等粒状組織)。
丸っこい形のものが多いです。
ここで花崗閃緑岩と判断している岩石の中で、鉱物組成(鉱物の量比)を偏光顕微鏡などで調べると、
実際には閃緑岩や花崗岩と判断した方がよい岩石があるかもしれません。
花崗斑岩
無色透明~灰白色の石英、白~うすいピンク色の長石、緑黒色の黒雲母などが岩石の中に斑点状に入り(斑状組織といいます)、くっきり見えます。
花こう岩に似ていますが、大型の長石類が斑点状に入る点で異なります。
かどのとれた箱型から楕円形のものが多いです。
溶結凝灰岩
緑がかった灰色のものがよく見られますが、白っぽいもの、茶色っぽいもの、黒っぽいものなどいろいろな色のものが見られます。2~5㎜の小さい斑晶(鉱物の結晶)がたくさん見られますが、平面形では三角形などの破片状になっていることが多いです。
様々な顔つきをしたものがあり、わかりにくいですが、長さ数cm、幅1cm以下の緑っぽいレンズ状のものが見られる場合はこの岩石であることがはっきりわかります。レンズ状のものがもっと大きいものもあります。
このレンズ状のものは、火砕流に含まれている軽石が圧縮されてできたものです。また、他の岩石の破片を多く含んでいるものもあります。
かどのとれた箱型から楕円形のものが多いです。
この溶結凝灰岩は、濃飛流紋岩の主体をなすもので、噴出後自重と熱によって圧縮しくっつく(溶結)ことによって、かなり硬い岩石となっています。
同じ噴出物であっても、量が少なかったり、熱が足らなかったりして溶結していない岩石(凝灰岩)もあります。
ホルンフェルス
泥岩や砂岩などが高い熱によって変成してできた岩石です。
表面はもとの岩石の色を基本にした色を示しますが、紫色っぽく(わずかに赤味を帯びて)見えることが多いです。
たいへん硬く、割れ口はかどばっていることが多いです。
そこに光を反射させると、新しくできた細かい鉱物がキラキラ光ることが多いです。
ハンマーでたたいたり、岩石同士をぶつけたりすると、金属音を出すことがあります。
丸っこいですが、多角形のものが多いです。
※注記
ここでは、岩石を肉眼で判断していますが、本来は岩石を薄くけずって、光が通過するようにして顕微鏡(偏光顕微鏡)などで観察し判断するのです。
そのため、間違って岩石名が書かれてある場合があるかもしれませんが、その場合はお許しください。