火成岩の成り立ち
河原の石を見る場合、上流の地質(どんな岩石が分布しているか)を確認し、その上でその石がどのようなものからできていて、どのようにしてできたのかを把握するように観察することが大切です。
確認には、産総研地質調査センターの地質図(全国)やジオランドぎふ(岐阜県のみ)を使うとよいでしょう。
今回は、火成岩の代表である安山岩と花崗岩について、どのようにしてできた岩石で、それが岩石のどこに表れているかを紹介したいと思います。
安山岩
安山岩という石は、長良川、木曽川、揖斐川沿いいずれの河原でも見られる岩石です。
しかし、それぞれの川沿いにある安山岩は、同じ安山岩という名称がついていますが、できた場所や時代は異なります。
いずれも安山岩質マグマ(52~66%のSiO2からなるマグマ)が地表へ噴出して冷え固まったり、地表近くで冷え固まったりしたものが、地表で削られ(侵食)、川で流されて(運搬)、河原で見られる(堆積)のです。
見かけは斑状組織と言って、目に見えないくらい細かい結晶またはガラス質のもの(石基とよびます)の中に、割合大きめの結晶(斑晶とよびます)が入っています。
おかゆに例えると、どろどろのかゆ状(石基)の中にご飯粒(斑晶)が入っている感じです。
また、その結晶には白っぽい粒と黒っぽい粒がありますが、白っぽい粒が斜長石で、黒っぽい粒が角閃石や輝石です(違う場合もあります)。
一概には言えないですが、方向によって割合均質であるため、全体的に丸いものが多いです。節理によって割れやすい面もありますので、そのような場合は平べったく丸い石になると思います。
花崗岩
花崗岩という石は、墓石や石碑としてよく使われる石です。長良川、木曽川、揖斐川沿いのいずれの河原でも見られます。
この石も安山岩のように、それぞれの川における供給源は異なります。長良川では奥美濃酸性岩の一つである高賀花崗岩が主な供給源でしょう。木曽川では東濃地域に広がる苗木花崗岩などの花崗岩が、揖斐川では貝月山花崗岩などの花崗岩が主な供給源となっています。
しかし、いずれの花崗岩も花崗岩質マグマ(66%以上のSiO2からなるマグマ)が地下深くでゆっくり冷え固まったものが、地表に現れ、そして削られ、川で流されて、河原で見られるのです。ゆっくり冷え固まったため、見かけは等粒状組織と言って、同じくらいの大きさの結晶が集まっています。
また、その結晶には白っぽい粒と黒っぽい粒がありますが、白っぽい粒が石英、斜長石、カリ長石で、黒っぽい粒が黒雲母です(違う場合もあります)。
一概には言えないですが、方向によって割合均質であることや、節理もありますが方状節理という立方体や直方体の割れ目ですので、全体的に平面形では円形や楕円形など丸いものが多いです。
木曽川の石ころ
平成川島橋(東海北陸道の木曽川にかかる橋の東の橋)下で見られる石を順に紹介します。
石の説明は、河原の石ころ2と同じですが、載せておきます。
なお、ここでは美濃帯堆積岩類の緑色岩(玄武岩質溶岩等)は見つけられませんでしたので、載せていません。
チャート
白色・灰色・黒色とそれらが混ざり合ったもの、あずき色、うすい緑色など、さまざまな色があります。
ハンマーなどで割るとゼリーのような半透明感がありますが、硬くてハンマーや釘で傷がつきません。
よくみると表面に小さな傷・へこみがあります。
割れたところは、ガラスの割れ口のように鋭いです。
他の石と比べて、ややかどのある多角形をしているものが多いです。
砂岩
灰色から暗い灰色のものが多く、風化して全体に淡黄色がかるものもあります。よくみると砂の粒がわかり、ざらざらしている場合があります。
黒色の小破片(泥岩)が入ることがあります。
ただし、熱変成作用などを受けると、砂の粒がわかりにくくなり、ざらざら感もなくなります。砂の粒が並んで、縞模様になることもあります。かどのとれた箱型から丸い形が多いです。
泥岩
泥が集まってできた岩石のため、灰色から黒色、つやのない黒色がほとんどで、粒が小さく、よく見ても石をつくる粒は見えません。
細長い楕円形や扁平なものが多いです。表面に割れ口がいくつもみられる場合があります。
溶結凝灰岩
緑がかった灰色のものがよく見られますが、白っぽいもの、茶色っぽいもの、黒っぽいものなどいろいろな色のものが見られます。
2~5mmの小さい斑晶(鉱物の結晶)がたくさん見られますが、見かけでは三角形などの破片状になっていることが多いです。
見慣れていないと判断しにくい岩石ですが、長さ数cm、幅1cm以下の緑っぽいレンズ状のものが見られる場合はこの岩石であることがはっきりわかります。レンズ状のものがもっと大きいものもあります。このレンズ状のものは、火砕流に含まれている軽石が圧縮されたものです。
また、他の岩石の破片(角ばっている)を多く含んでいるものもあります。かどのとれた箱型から楕円形のものが多いです。
花崗岩
表面はなめらかに見えますが、触ってみると少しざらざらします。
わかめご飯のおにぎりのように、黒い粒と白い粒、うすピンク色の粒が、同じような大きさで入っています(等粒状組織といいます)。
入っている鉱物は石英、長石(斜長石、カリ長石)、黒雲母などです。黒い粒(黒雲母)のところが浅くくぼんでいるものがあります。丸っこい形のものが多いです。
花崗斑岩
無色透明~灰白色の石英、白~うすいピンク色の長石、緑黒色の黒雲母などが岩石の中に斑点状に入り(斑状組織といいます)、くっきり見えます。
花崗岩に似ていますが、大型の長石類が斑点状に入る点で異なります。かどのとれた箱型から楕円形のものが多いです。
流紋岩質溶岩(湯ヶ峰流紋岩、小川石)
淡灰色、淡青灰色、淡赤灰色などの色がみられ、縞模様になっています。縞模様の方向で板状に割れやすいです。
風化面では長石などの細かい鉱物が並んで見えるため、砂岩と見まちがいやすいです。
平たく、かどのとれた箱型から楕円形のものが多いです。
安山岩
暗い灰色のものが多いですが、白っぽいものもあります。
白色と緑黒色をしたやや大きい斑点状の結晶(斑晶)がわかるものが多いです。白色の鉱物が長石(斜長石)であり、緑黒色の鉱物が角閃石や輝石です。
斑晶があまりはっきりとしないものもあり、砂岩と見まちがえる場合があります。
丸っこい形のものが多いです。
ホルンフェルス
泥岩や砂岩などが高熱(近くに分布する花崗岩などの熱)によって変成してできた岩石です。
表面はもとの岩石の色を基本にしてさまざまな色を示しますが、紫色っぽく(わずかに赤味を帯びて)見えることが多いです。これは、熱変成作用によって、黒雲母などの細かい鉱物が生成されているためです。
日光を当てると、新しくできた細かい鉱物がキラキラ光ることがあります。
硬く、割れ口はかどばっていることが多いです。ハンマーでたたいたり、岩石同士をぶつけたりすると、金属音を出すことがあります。丸っこいが、多角形のものが多いです。
注記
※ここでは、岩石を肉眼で判断していますが、光が通過する本来は岩石を薄くけずって、光が通過するようにして顕微鏡(偏光顕微鏡)などで観察し判断するのです。そのため、間違って岩石名が書かれてある場合があるかもしれませんが、その場合はお許しください。