石英の雁行脈【長良川本流沿い露頭編118】

郡上市八幡町西乙原には長良川に架かる長良川鉄道の鉄橋があり、その近辺の長良川沿いには岩石が何ヶ所も露出しています。

地質図によると、灰色(Mmx)で、メランジュからなる地層です。(地質図はHP「ジオランドぎふ」より 岐阜県博物館提供)

実際に露頭を見ると、混在岩もありますが、チャートも分布しています。長良川左岸側の鉄橋の橋脚から下流へ100mほどのところには、赤色(エンジ色)のチャートが見られる露頭があります。

郡上市八幡町吉野東乙原左岸露頭(長良川鉄道鉄橋橋脚(左岸)から下流へ100mほど)

近づいてみると、全体的に明確な層状にはなっていなく、赤色のチャートと淡緑灰色のチャートが縞状に混じっていたり、お互いに不定形をして混じっていたりします。

長良川本流沿い露頭編その103雁行脈を紹介しましたが、ここの露頭でも見られます。

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ここの雁行脈は、チャート中の石英脈です。一つ一つの脈の長さが1cm~3cmで、幅が数mmといった細くて短いものが何本も平行で並んでいて、全体としては斜めに配列しています。

雁行脈

雁行脈は、鳥の雁(がん)が斜めに並んで空を飛ぶ形を連想させることからつけられた呼び名です。外から力が加わり断層のようにずれ動く時に、雁行に亀裂ができ、そこに鉱物(ここでは石英)が充填したものです。

雁行には、「杉」のつくりの部分の形(杉型)と「ミ」の字の形(ミ型)があります。ここでは両方が見られますが、「ミ型」は見にくいです。「杉型」は140cmほどの範囲で、「ミ型」は120cmほどの範囲で確認できます。

「杉型」は右ずれの変位を示し、「ミ型」は左ずれの変位を示しますので、この石英脈が形成された時には、中下の写真でいくと左上から右下の方向に圧縮する力が加わっていたと考えられます。

写真は、同じ露頭内で見られる石英の雁行脈を真上から南を向いて撮ったものです。スケールの下に横方向に見られるのが「杉型」の雁行脈で、その下に左上から右下にかけて見られるのが「ミ型」の雁行脈です。

下の写真は上の写真のスケールの下部を真上から東を向いて(上の写真の右側から)近づいて撮ったもので、「杉型」の雁行脈の一本一本がわかると思います。スケールとして置いてあるハンマー、黄色の定規、シャープペンシルの長さはそれぞれ約28cm、約20cm、約14cmです。

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この記事を書いた人

元小中学校の教員(岐阜県美濃地方)。
定年退職し、今までなかなかできなかった川沿いの地質などを見て回っています。
特に、長良川沿い(支流を含めて)、長良川鉄道沿いの地質を広めていきたいと思っています。
「みのひだの地質99選(岐阜新聞社発行)」とHP「ジオランドぎふ」を参考に、岐阜県美濃地方を歩いています。

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