木曽川沿いの石ころ
木曽川は、美濃加茂市で飛騨川と合流しています。
そのため、それより下流では木曽川流域と飛騨川流域の両方の地質を反映しています。
木曽川流域にはおもに花崗岩類、濃飛流紋岩、美濃帯堆積岩類が、飛騨川流域にはおもに濃飛流紋岩と美濃帯堆積岩類がそれぞれ分布しますから、これらに由来する岩石が下流に運ばれています。
美濃帯堆積岩類の中には、花崗岩による熱変成作用でできたホルンフェルスも含まれています。
これらのほかに、美濃加茂市周辺に分布する瑞浪層群、飛騨川流域の下呂付近のみに分布し特徴的な顔つきをしている湯ヶ峰流紋岩、そして両河川の最上流部に分布する御嶽・乗鞍火山の噴出物(安山岩など)が見られます。
地域名のついた岩石
岩石は成因で分類され名称がつくのですが、中には特徴的な岩石であるため、肉眼でどこの火山から噴出された岩石かまでわかる場合があります。
そのような場合は、地域名などをつけて呼ばれます。
縄文時代の遺跡で見つかる矢じりなどの石器の中で、「下呂石」と呼ばれる岩石でできたものが各地で見つかっています。この下呂石は、成因で分類すると流紋岩質溶岩で、下呂市の湯ヶ峰火山から噴出した溶岩です。
同様に下呂石とは見かけはかなり異なりますが、湯ヶ峰火山から同じく噴出した「小川石」と呼ばれる岩石も流紋岩質溶岩で、庭石などに使われています。
木曽川沿いの河原では下呂石はなかなか見られないものの、小川石は見られます。
木曽川沿い:愛岐大橋下流左岸の河原(愛知県江南市)の石ころ
それぞれの石の特徴と写真を載せます。
美濃帯堆積岩類(チャート、砂岩、泥岩、緑色岩)、濃飛流紋岩類・花崗岩類(溶結凝灰岩、花崗岩、花崗斑岩)、湯ヶ峰流紋岩(流紋岩質溶岩)、安山岩、熱変成作用でできたホルンフェルスの順に紹介します。
ただし、長良川沿いの石ころで紹介したチャート、砂岩、泥岩、緑色岩(玄武岩質溶岩等)、溶結凝灰岩、花崗岩、花崗斑岩、安山岩の説明は長良川沿いのものとほとんど同じです。
チャート
白色・灰色・黒色とそれらが混ざり合ったもの、あずき色、うすい緑色などさまざまな色があります。
ハンマーなどで割るとゼリーのような半透明感がありますが、とても硬くてハンマーや釘で傷がつきません。
よくみると表面に小さな傷・へこみがあります。割れたところは、ガラスの割れ口のように鋭いです。
他の石と比べて、かどのある多角形をしているものが多いです。
砂岩
灰色から暗い灰色のものが多く、風化して全体に淡黄色がかるものもあります。よくみると砂の粒がわかり、ざらざらしている場合があります。
黒色の小破片(泥岩)が入ることがあります。
ただし、熱変成作用などを受けると、砂の粒がわかりにくくなり、ざらざら感もなくなります。
砂の粒が並んで、縞模様になることもあります。かどのとれた箱型から丸い形が多いです。
泥岩
泥が集まってできた岩石のため、灰色から黒色、つやのない黒色がほとんどで、粒が小さく、よく見ても石をつくる粒は見えません。細長い楕円形や扁平なものが多いです。
表面に割れ口がいくつもみられる場合があります。
緑色岩(玄武岩質溶岩など)
緑色、暗い緑色、黄緑色で、あずき色がかることもあります。
よく見ても結晶の粒は見えないことが多いですが、結晶の粒が大きい場合、光に反射させると細かくキラキラ光るものもあります。
表面に幅のせまい割れ目やへこみのあることがあります。いびつな形がふつうで、かどがとれて丸みがあります。
海底などで噴出した玄武岩類で、圧力や熱、熱水などにより変質作用を受けていて、変質作用でできた鉱物の多くは緑色です。そのため、全体に緑っぽい色の石となります。
溶結凝灰岩
緑がかった灰色のものがよく見られますが、白っぽいもの、茶色っぽいもの、黒っぽいものなどいろいろな色のものがあります。
2~5mmの小さい斑晶(鉱物の結晶)がたくさん見られますが、見かけでは三角形などの破片状になっていることが多いです。
見慣れていないと判断しにくい岩石ですが、長さ数cm、幅1cm以下の緑っぽいレンズ状のものが見られる場合は、この岩石であることがはっきりわかります。レンズ状のものがもっと大きいものもあります。このレンズ状のものは、火砕流に含まれている軽石が圧縮されたものです。
また、他の岩石の破片(角ばっている)を多く含んでいるものもあります。かどのとれた箱型から楕円形のものが多いです。
花崗岩
表面はなめらかに見えますが、触ってみると少しざらざらします。わかめご飯のおにぎりのように、黒い粒と白い粒、うすピンク色の粒が、同じような大きさで入っています(等粒状組織といいます)。
入っている鉱物は石英、長石(斜長石、カリ長石)、黒雲母などです。黒い粒(黒雲母)のところが浅くくぼんでいるものがあります。丸っこい形のものが多いです。
花崗斑岩
無色透明~灰白色の石英、白~うすいピンク色の長石、緑黒色の黒雲母などが岩石の中に斑点状に入り(斑状組織といいます)、くっきり見えます。
花こう岩に似ていますが、大型の長石類が斑点状に入る点で異なります。かどのとれた箱型から楕円形のものが多いです。
流紋岩質溶岩(湯ヶ峰流紋岩、小川石)
淡灰色、淡青灰色、淡赤灰色などの色がみられ、縞模様になっています。
縞模様の方向で板状に割れやすいです。風化面では長石などの細かい鉱物が並んで見えるため、砂岩と見まちがいやすいです。平たく、かどのとれた箱型から楕円形のものが多いです。
安山岩
暗い灰色のものが多いですが、白っぽいものもあります。白色と緑黒色をしたやや大きい斑点状の結晶(斑晶)がわかるものが多いです。
白色の鉱物が長石(斜長石)であり、緑黒色の鉱物が角閃石や輝石です。
斑晶があまりはっきりとしないものもあり、砂岩と見まちがえる場合があります。丸っこい形のものが多いです。
ホルンフェルス
泥岩や砂岩などが高い熱(近くに分布する花崗岩などの熱)によって変成してできた岩石です。
表面はもとの岩石の色を基本にしてさまざまな色を示しますが、紫色っぽく(わずかに赤味を帯びて)見えることが多いです。これは、熱変成作用によって、黒雲母などの細かい鉱物が生成されているためです。日光を当てると、新しくできた細かい鉱物がキラキラ光ることがあります。
硬く、割れ口はかどばっていることが多いです。
ハンマーでたたいたり、岩石同士をぶつけたりすると、金属音を出すことがあります。少し丸い多角形のものが多いです。