花崗斑岩の急冷周縁相【長良川本流沿い露頭編62】

郡上市美並町黒地の長良川左岸には、チャートを貫いて花崗斑岩が露出しています。

写真は花崗斑岩の露頭を西からパノラマで撮ったもので、左側の白っぽい露頭が花崗斑岩で、写真右に露出しているのがチャートです。

郡上市美並町大原黒地左岸露頭

下の写真は同じような写真が二枚並んでいますが、写真の下部にある●を、左の写真は左目で、右の写真は右目で見て、重ね合わせるようにすると立体的に見ることができます。

急冷周縁相

花崗斑岩は多くの場合、石基と呼ばれる細かい鉱物の結晶やガラス質の中に、斑晶と呼ばれる大きな鉱物の結晶が入っています。

この露頭をよく観察すると、チャートとの接触部付近では花崗斑岩を構成する鉱物の粒が全体的に細かく、接触部から離れた花崗斑岩には大きな斑晶が入っているのがわかります。

下の写真は、上の写真の中央下縁部分を近づいて西から撮ったものです。右側は鉱物全体が細かいですが、左側は粗い鉱物が入っています。

スケールとして置いてあるハンマーの長さはそれぞれ約28cmです。

マグマが貫入して板状に固まったものを岩脈といいますが、花崗斑岩などの岩脈では、より大きな結晶が岩脈の中央部に集まる傾向が知られています。

このように、貫入した岩体において、貫入された岩石との接触部付近では鉱物の結晶が細かいという岩相を急冷周縁相と呼びます。

下の写真は鉱物の大きさの違いがよりわかるようにした写真で、右側は接触しているチャート層の近くの花崗斑岩(急冷周縁相の部分)で、左側は接触部から離れた場所の花崗斑岩です。写真の縦は10cmです。

急冷周縁相のでき方

冷え固まる前の岩脈の中をマグマなどの液体が流れて移動する際、他の岩石との接触部では低温と摩擦のため流れがゆっくりになりますが、中央部は流れが速いままです。

すると、高速である中央部に大きな結晶が移動するのです。そのため他の岩石との接触部では、大きな結晶は移動してしまい、かつ急冷のため鉱物が成長することもできないので、結晶は細かいガラス質になるのです。

ここで見られる花崗斑岩(貫入岩)は地質図でも表現がしてあり、この露頭が見られる×地点はピンク色(Okg)の中にあります。Okgは奥美濃酸性岩類関連の岩脈(貫入岩)です。

前回の記事はこちら。

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この記事を書いた人

元小中学校の教員(岐阜県美濃地方)。
定年退職し、今までなかなかできなかった川沿いの地質などを見て回っています。
特に、長良川沿い(支流を含めて)、長良川鉄道沿いの地質を広めていきたいと思っています。
「みのひだの地質99選(岐阜新聞社発行)」とHP「ジオランドぎふ」を参考に、岐阜県美濃地方を歩いています。

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