美並町八坂の珪質泥岩層と貫入岩【長良川本流沿い露頭編63】

美濃帯堆積岩類は海洋で噴出したり堆積したりしたものがもとになっています。例えばチャートは、陸地から遠く離れた深海底で堆積したものです。

一方、珪質泥岩は、海洋プレートの移動によってやや陸地に近づいたところで堆積しました。

沖合の海溝に近い部分で、チャート形成のもととなっている放散虫と泥の粒がまざって堆積したものです。

今回紹介する露頭では、珪質泥岩層に貫入岩が入り込んでいるのを見ることができます。

郡上市美並町上田八坂右岸露頭(長良川鉄道鉄橋橋脚下流へ150m弱の右岸)

写真は珪質泥岩層と貫入岩の露頭を南から撮ったものです。黒っぽく見えるのが珪質泥岩で、白っぽく見えるのが貫入岩です。

貫入岩は、表面上淡褐灰色をしていますが、割ってみると淡灰色です。1mm~数mmの長石が点在していますが、石英は肉眼では確認できません。岩石名は花崗斑岩だと思いますが、顕微鏡などで鉱物を確認しているわけではないため、ここでは貫入岩としておきます。

下の写真は貫入岩を接写したもので、写真の縦は4cmです。

下の写真は、珪質泥岩層と貫入岩の境界部を南東から撮ったものです。黒っぽい岩石が珪質泥岩で、淡褐灰色をしている岩石が貫入岩です。スケールとして置いてあるハンマー、シャープペンシルの長さはそれぞれ約28cm、約14cmです。

同じような写真が二枚並んでいますが、それぞれの写真の白丸または黒丸を、左の写真は左目で、右の写真は右目で見て、重ね合わせるようにすると立体的に見ることができます。(地質図はHP「ジオランドぎふ」より 岐阜県博物館提供)

地質図において、この珪質泥岩層が見られる露頭(×地点)はそら色(珪質泥岩からなる地層)の中にあります。貫入岩は規模が小さいため地質図には表現されていません。×地点の南西にはおもにチャートからなる地層(オレンジ色(Mch))、北東にはメランジュからなる地層(灰色(Mmx))が分布しています。

前回の記事はこちら。

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この記事を書いた人

元小中学校の教員(岐阜県美濃地方)。
定年退職し、今までなかなかできなかった川沿いの地質などを見て回っています。
特に、長良川沿い(支流を含めて)、長良川鉄道沿いの地質を広めていきたいと思っています。
「みのひだの地質99選(岐阜新聞社発行)」とHP「ジオランドぎふ」を参考に、岐阜県美濃地方を歩いています。

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